Underworld

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明らかに自分達と敵対する人物に情報を垂れ流し、実際にそれが悪用され悲劇を招いてしまった。対価として得たその視界で惨状を目の当たりにしても尚、レピンスは仲間を裏切るつもりはなかった、致命的な情報は渡していない筈だったと宣った。 本来であれば、これは聞くに堪えない泣き言、或いは見苦しい自己弁護の類に捉えられても仕方がない。他でもないレピンス自身もそれを痛感しており、そんな甘えを吐露しても良かったのかと言う後悔の念に駆られている。しかし、それでもルゴールドに向かってそれを口にした。その甘えこそ、ルゴールドが何よりも欲しかったものである。 (人と向き合って話すと言うことが、これ程までに焦れったく辛抱が必要な行為だったとは。しかし、これで重要な足掛かりを得ることができました。私もようやく……羽桜龍希の領域に足を一歩踏み入れることができたのかもしれませんね) ルゴールドはレピンスの両肩を優しく掴み、そっと横に退けた。そしてその先にある玄関へと続く廊下へと足を進める。 「おい、行くのか……!?」 「貴方はここで待っていて下さい。私が合図するまで、向こうで何が起こっても動かないようにお願いします」 「それは構わないけど……だってお前、俺達がここにいることを国軍に知らせるかはバニアス達に任せるって……」 「それは最悪、守りに徹しなくてはならなくなった場合の話です。一度向かわせてしまったら彼等と意思疎通は取れませんから、最も安全なプランを伝えたまで」 だがここからは違う。攻めに転じる。そう言いながら、ルゴールドは目には見えないものを握り締めた手を小さく掲げた。
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