Underworld

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「お前、どうして……!?」 玄関から吹き込む微かな山風を身に纏い、ルゴールド・グランエルが静かなる戦場に立ち入った。打ち合わせと違う状況に戸惑うバニアスを尻目に状況を見定める。 開いた戸の先に居たのは案の定ここを嗅ぎ付けた国軍であった。それなりの時間を掛けてレピンスと会話をしていたが、その間に敷居を跨がせていないところからバニアス達の奮闘が伺える。それを棒に振ってしまったことを申し訳なく思いつつも、次は国軍に目を向けた。 「グルーフィン・レーガン。貴女も来ていましたか」 龍希、延いてはその仲間と交流があるからか、先程まで先頭に立ちバニアス達と問答を繰り広げていたと思われるのはグルガンであった。無論、その数歩後ろにはしっかりと兄のグルーフィンが多くの兵を引き連れて待機している。 しかしそれを加味しても、グルガはン此方の話を聞き入れる余地があり、なおかつギランハーツとの仲介役になれる貴重な人物である。ルゴールドはバニアスに後は任せて欲しいと告げ、グルガンと向かい合うべく最前線に立った。 「この話、私が引き継いでも宜しいですか?」 「……」 グルガンは無言で振り向き指示を確認する。ギランハーツも同じく無言で微動だにせず、その様子から「先ずは好きにやってみろ」と命じた。 「貴女方、国軍の要求は羽桜龍希を誘き出す人質を差し出すこと……具体的には空鍔有子、そして我が主である楠木大悟の二人。そうですね?」 「……そうだ」 やはりどのような状況、どのような立場であってもボルトガードを壊滅させた張本人であるルゴールドは赦し難いのだろう。言葉尻は重く、テンポも悪い。何か考えがあって出て来たことは分かっていても、バニアスは不安を拭えなかった。
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