Underworld

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人間の楠木を主と呼び、龍希やブランクと関わりの深いメンバーと同じ側に堂々と立っている。ブランクがルゴールドを赦し、仲間に迎え入れた言う話は本当だった。自らの目で見て確かめた事実は、正に百聞を上回る衝撃を与えた。 「とても談笑に花を咲かせる気分ではないでしょうが……それにしても、奇妙な状況ですね」 「知ったような口を利くな……!」 言葉の端々から凄まじい憎悪が伝わって来る。自分のことが赦せないだけではなく、それを知りながら自分と楠木と引き合わせたブランクにもその憎しみは波及したのだと容易に想像できる。そうでなければグルガンが国軍側に付いている現状の説明が付かない。兄であるギランハーツに唆された部分もあるかもしれないが、それだけでブランクの敵に回るとは思えない。 「身の程知らずな言葉でした。申し訳ありません」 つまりグルガンは現状、心底国軍側と言うことである。ブランクの威を借りて仲介役に仕立て上げるプランは心の中で早々に撤回した。この舌戦は僅かな油断が命取りであり、失敗は許されない。交渉の決裂は有子達の未来を閉ざしてしまう。 「身の程知らずと言うことが分かっているなら付け加えさせてもらうが、実のある話だろうとそうでなかろうと、私は貴様と対話をするつもりなど欠片もない。私が問い、貴様が答えるのはただ一つ。此方に従うつもりがあるのか、否かだ」 ルゴールドはその高圧的な態度を見て、固唾を飲むバニアスとは逆に強い手応えを感じた。ルゴールドが後先を忘れてしまえば、この場にいる国軍全員の命はない。その残酷なまでの力量差をグルガンは身に刻まれて理解している筈だからである。 しかし、グルガンはルゴールドに遜ることなく攻撃的な言葉をぶつけた。それは、今のルゴールドは狂気に身を任せたりはしないと言う信頼の裏返し。更に辿れば、ルゴールドを信じたブランクのことをまだ信じていると言うことである。
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