Underworld

21/32
前へ
/930ページ
次へ
「この際なので単刀直入に申し上げましょう。此方には協力する意思があります。ですが、協力したくてもできない状況なのです。一人が攫われました」 「なに……?」 グルガンの眉間のシワが緩んだ。この回答が想定外であることは見て取れるが、一度カードを切ったルゴールドは立ち止まらない。 「シノバズと言う組織の尖兵、ライズと言う男です。奴は何故かこの家の中で待ち伏せをしており、空鍔有子を捕獲しそのまま元の世界へと消えました」 「バカな。襲撃ならまだしも待ち伏せだと?」 「私達からしてもにわかに信じられません。もし疑うのなら、嘘が吐けなくなる魔法を私に掛けてからでも結構です。先約は避けて頂きますがね」 ルゴールドは顎を持ち上げ、既に楠木との契約で印が付いている首を指し示した。 「しかし本当に問題なのはここからです。先ほど述べたように、私達は『待ち伏せ』をされていた。つまり奴は知っていたと言うことです。人目に付かずバニアスが常時待機していると言うこの上ない避難場所があると言うことを。そして何より、私達が何者かに追われてここに避難して来ると言うことを」 「・・・・・・!」 グルガンは理解した。ルゴールドは自身の立場からしてあまりにも烏滸がましいため明言を避けたが、疑われているのは自分達国軍であると言うことを。 前者はともかく、後者の情報だけは国軍に繋がりを持っていなければ手に入れることができない。事実ライズは前者の情報をレピンスから入手していたが、レピンスは致命的な情報は与えておらず裏切り行為もしていない、例えばルゴールドが避難してきたことを確認して合図を送ったりもしていなかったと弁明した。つまり、ライズは国軍から直接情報を得ていたことが導かれる。 ルゴールドが焦燥に耐えてレピンスから甘えた言い訳を引き出した真意は、此処にあった。
/930ページ

最初のコメントを投稿しよう!

222人が本棚に入れています
本棚に追加