Underworld

22/32
前へ
/930ページ
次へ
「勿論これは消去法で導いた仮説に過ぎません。もしも貴女が他に心当たりがあると言うのなら、是非教えて頂きたいところです」 嫌味とも取れる言い回しだが、口調からそのような意図は感じられない。それどころかグルガンは、ルゴールドの仮説を肯定する方向の心当たりを持っていた。 自分はルゴールドを赦したブランクに失望し、仕えることを諦めた。その当て付けのように、ブランクを罪人にしようとする兄に同調して今でもこうして活動を続けているが、それは本当に正しかったのか。そんな疑念が胸の内に沸々と湧き上がった。 「グルーフィン。惑わされるな。今会話をしている人物が誰なのか、もう一度思い出して目に焼き付けろ」 「!」 そんな心中を読み取り、グルガンの忠義を奪わせまいとギランハーツが背後から発破を掛けた。 「そうだ……改めて警告するが、私は貴様と対話する気はない」 「それは残念ですね。それでしたら、此処で貴女達とはお別れです」 「どう言う、意味だ」 周囲に緊張が走り、ギランハーツの隊列が僅かに幅を広げる。 「無論、また逃げると言うことですよ。本当に止むを得ない状況にならない限り貴女達を傷付けたり殺めたりすることはありません。敵であろうと味方であろうと、殺して関係を断ち切ってしまえばそれだけ世界は縮まって行きます。我々はどんな小さな可能性も取り零すことは許されないのです」 「その攫われたもう一人の人間を、救うためか」 「そうです。先ほども言いましたが、無い袖は振れません。協力しようにも殺し屋に先を越されたので差し出せる人間がいないのですよ」 「……残った方だけでも構わない。と、言ったらどうする」
/930ページ

最初のコメントを投稿しよう!

222人が本棚に入れています
本棚に追加