Underworld

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探ったな。私の腹を。懐に飛び込まねばできぬことだ。 「構いませんよ。引き離されぬと言うのなら」 「……そうか」 しかし、グルガンその言葉を手放しに信用しているとは言えない反応であった。楠木と共に龍の世界へ渡ると言うことは、龍希との誓いを破り主を自ら危険に晒すと言うことになる。況してや国軍に身柄を拘束されてしまっては、有子や越光を救出することも敵わない。 そもそも、例えグルガンが属していようとも今の国軍に手を貸すことは龍希に背くことに等しい。そんな返事を、ルゴールドが何の条件もなしにしてくるとは到底思えないからである。 「お分かり頂いているようで何よりです。当然、此方にも要求と言うものがあります」 宿敵として睨まれ、話し合うつもりはないと二度に渡って釘を刺されたにも関わらず、ルゴールドは武力による脅しに頼ることなく懸命にグルガンと交渉を続けた。自分の話を切り出す前振りとは言え、仲間の救出に焦る中でグルガンの無礼とも取れる提案を飲み込む姿勢も見せた。 「我々に協力すると言うのなら、聞くだけ聞いてやろう」 ここまで粘り、ようやく会話のポケットが開く。そこに捩じ込める言葉は一呼吸か、多くてもその二倍の分まで。それまでに相手の心を掴まなければならない。 「重ね重ね申し上げますが、私達は仲間を助けなければなりません。それを最優先に先ずは泳がせて頂きたい。無論、その対価はお支払いします。貴女達が私達を人質より丁重に扱ってくれると言うのなら、私達も人質より優れた仕事で恩を返しましょう」 「具体的には、どうするつもりだ」 「私達が、羽桜龍希を捕らえて貴女達の前に差し出します」
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