Underworld

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グルガンは量として僅かであったが、煮詰まった時間で熟考した。迷いながらも負の感情は自然と薄れており、苦痛は少ない。この場の指揮命令者である兄に判断を委ねる逃げの一手も忘れて真剣に思い悩んだ。 「私は貴様が更生したなどとは、全く以て信じられない……が、それはあくまで私情に過ぎない。今は不測の事態に対応するため、合理的な判断をしなければならない時だ」 「では私の提案は、理に叶っていると?」 「今の国軍は、脱獄犯共への対応で人手が全く足りていない。羽桜龍希とブランク・マキナの捕獲にどれだけのリソースを割けば良いのかについても、皆目見当が付かない状況だ」 「まあ、だからこそ所縁のある人間を寄せ餌にしようと此処を訪れた訳ですしね」 ターゲットである龍希の戦闘能力は未知数であり、状況と本人の心理状況で幅広く変化する。中途半端に追手を放っても貴重な人員を失うだけで終わってしまう可能性が高く、ルゴールドが龍希達を捕らえることができると言うのであればそれに越したことはない。 個人的な因縁と感情を除けば、ルゴールドの提案は国軍にとって非常に魅力的なものである。 「決断ができたのであれば、今ハッキリと返事を聞いておきましょう。貴女は私の協力を受け入れる。羽桜龍希の捕獲を条件に、我々が攫われた仲間を奪還するために向こうの世界で活動することを容認する。異存はありませんか?」 「私の返事で良ければ聞かせてやる。好きにしろ。だがこの件は私の一存だけでは決められない」 ここでグルガンはようやく背後を振り返るが、ギランハーツは特に異を唱えることもなく静かに頷いた。ルゴールドはそこだけが気掛かりだったが、無事に交渉を終えられたことに安堵した。
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