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エルトが態度を改めたことでルゴールドが提示したアイデアは、確かに全員を頷かせるものだった。確実とまでは言えないが、賭ける価値は十分にある。少なくとも、それを上回るようなアイデアを出せる者はいなかった。
「どうやら、納得していただけたようですね」
「ええ。感服致しました」
「後は十分な休息を取り、態勢を整えて出発としましょう。とても気が休まる状況ではないと思いますが、無理やりにでも休んで下さい。それも強さの一種ですから」
ルゴールドが示した希望は、エルトの心身に目を瞑って睡眠に就く自由を与えた。しかし一同は、ただ朝日が昇るだけでは出発することができない。どれだけエネルギーを持て余そうと、最後のピースが埋まらなければここで足止めを食らうしかない運命にある。
「……来ましたか」
幸い、その最後のピースは遅れることなくやってきた。朝食として干し肉や果実が乱雑に放り込まれた籠を持って現れたグルガンがそれにあたる。
「ご厚意に感謝します。それで、昨日の話は上に通していただけましたでしょうか」
グルガンには食料よりも届けなければならないものがある。今回の作戦に国軍の協力が得られるかどうかの答えを受け取ること、それこそが出発の条件であると共に一同の命運を分ける大きな要素であった。
「結論から言おう。協力はしてやる。ただしこれは、貴様の監視が主となる目的であることを忘れるな」
「無論、心得ています。私達……もとい、私には監視が付く。同時にそれは戦力の提供でもある。そう言うことですね?」
「そして、その役目は私が負う」
貴女一人だけですか。以前のルゴールドなら迷いなくそう口走り、グルガンの機嫌を損ねていた。しかし今は違う。これが最後の確認。次の言葉を待つルゴールドの沈黙を以って、ようやくグルガンは爪先だけ、自分の領域にルゴールドが踏み込むことを許した。
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