願いを叶えよう

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願いを叶えよう

人間の認識では、 彦星を働かせる為に神様が引き離して、 年に1度会う事を条件にしたら働き始めた とか、言うが全くそんな事はない 彼奴等、年中イチャコラしてるからな それに7月7日の七夕で天の川が見れる! なんて言うが 毎日、天の川は見られるからな! 7割のやつが、光害があって見上げても見れないだけで オーロラでも見える場所か、砂漠の真ん中でも行ってくれ 上にあるから だから頼む! 俺に、この俺に7月7日限定で 全国各地から大量の願い事を送らないでくれ!!! 「『野球選手になりたい』練習しろ餓鬼。んと、こっちは『全てのダニを駆逐して欲しい。アレルギーヤバイ』……業者呼んでくれ。こんなので7代の福を1代で使いたいのか?」 「聖天様!」 「大聖歓喜天と呼べとあれほど……なんだ?」 分厚くどこまでも長い巻物を広げては、次々に浮かび上がる願いを見ては、誰のを叶えるか考えていく その者の普段の行いや、この俺を信じているか、 そう言ったものを瞬時に見抜く力が有るために 人が言う" 願いを叶えてくれる "という神様は、 この大聖歓喜天になるのさ! 元々、インドの神様だった……なんて言われるが 小さな地球の、生きてる生物の願いなんて 人間が仕切った境界線なんて関係無く、 今も昔も誰のものでもない だから俺は、自分の好きな願いしか叶えないひねくれ者なのさ 「新しい巻物で御座います!今年の御願いは、似てますね」 「……そうだな」 数十年に一度、訪れる大きな流行り病が流行してから似たような願いが贈られるが 神である俺が、1人の人間を助けるなんて事は出来てない 悪いが、人間同士の事は人間でやってくれと思う 新しい巻物を手に取り、広げながら見て行けば ふっと、目についた願いを口にする 『皆の御願いを叶えてくれる、神様に休暇がありますように』 「君は天使か!!!」 生まれて5歳程度の女の子、なんて純粋なんだ それに、休暇って言葉を知ってる事すら驚きだが その言葉に胸が打たれた 「グハッ……俺に、どうか……俺に休暇を……!」 「聖天様!次の巻物がやって来ましたよ」 「おい、今……俺の話を聞いていたか?止めだ。止め、この子を直々に見てくる」 「えっ、ちょっ、聖天様!この願いの数々どうするんですか!?」 「上手いことピックアップしてくれ。まぁ、願いってのはいつの間にか叶うものなんだか。今日中じゃなくていいだろ」 白虎の凭れていた身体を起こし、ひらっと羽衣を揺らしては服装を今時風の男性がよく着てる スーツというやつに着替えれば、白虎に跨がり地上へと降りていく 「聖天様!!」 「だから大聖歓喜天って言えって……」 いや、これ以外に幾つもの名前が有るんだが 一番の御気に入りなんだ、いいだろう さて、あの御願いを書いてくれた少女は…… うーん、病院の中にいるのか、仕方無い 「わっ、おほしさまがふってきた!」 「残念、俺はお星様じゃなくて、神様だ」 「かみさまぁ?」 夜空から降り注ぐ光る星は、俺の通った後に落ちてくる それを見た少女は、キラキラとしたまん丸目を向けて見上げた 窓から、病室に入り、不法侵入ごめんね、と思いながら駆け寄ってきた少女の為に裾を汚ししゃがみこむ 「そう、神様だ。なぁ、なぜあんな御願いをしたんだ?」 「うーんと、うーんとたいへんかなって」 「そっか……(天使か!!)特別に御願いを叶えてやろう。なにを望む?病気を治してやろうか、それとも……」 これは俺を気遣った礼だ、なんでも答えてやる ものによっては多少の投下交換は必要だが 簡単な物なら構わないと、思えば 少女は頬をピンク色に染めて答えた 「あのね!神様の、お嫁さんになりたい!」 「……は?この、俺の?」 「うん!神様、かっこよくて……キラキラしてるの!」 嗚呼、きっとオモチャを欲しがる子供と同じだろう 君もそう言う願いを思うならば、試してみてやるよ 「そうか、なら君が18歳になるまで。その願いを覚えているなら嫁として迎えに来よう。だが、行いを踏み外せば7世代まで不幸になるぞ。この大聖歓喜天を夫にしたいと口にした罪は重い」 ポカーンと口を開けた少女を見てから、彼女の頭に触れ 首元に星のマークのような証を付ければ背後へと行く 「あ、かみさまぁ。またくる?」 「13年後に、御前が覚えていたら来てやる。俺は大聖歓喜天、覚えていろよ。星乃(ほしの) 明里(あかり)」 「だい、ちょう、が……いたい?」 「だい・しょう・かんぎ・てん!!」 「だいちゃん!」 「もう、それでいい……じゃな。明里」 「うん!またね!」 バイバイと手を振った少女を見た後に 病はその内治るものだと判断した為に、 今回は何もせず天へと戻った 白虎はニヤニヤとしていたが、あんな約束 覚えてるはずも無いだろう 「聖天様!!お仕事を!」 「……はいはい」 もう少しまともな御願いがありゃいいが、と期待しつつ 普段の場所に座り白虎をクッションに巻物を広げていく 人間にとって1年、2年はとても永いだろうが 俺達、神からすりゃ瞬きするほどに短い 1月1日、7月7日、あの少女がどんな願いをして 普段どんな行いをしてるのか、時々見ながら 他の奴の願いを見ていく 7世代分の福を使って叶えた方がいい、 願いはとても少ないからそれを探す方が苦労する 少量の福で事足りる小さな願いは、狐 やら蛇といった獣の神使い達に叶えさせに向かわせ それ以外は他の連中が叶えていき 大きな願いは俺が叶える 人間にとって13年の月日が流れていた いつしか、彼女の願いを探すようになっていた 溢れて願いが溺れてしまう中から、 唯一輝くように光る願いを見れば自然と口角が上がる 「少し出掛けてくる。後は任せたぞ」 「えぇ、またですか!?」 「白虎、行くぞ」 ふっと笑った白虎の背に跨がり、今回はスーツなんてものを着ること無く本来の姿のまま会いに行くとする もし、この姿を見て気に入らなければそれでいい 俺にとって他愛もない暇潰し程度の時間だったのだから もし、彼女が俺を見ても怖がる事無く求めるのなら 人間としての時間は、余りにもあっという間だから その時間を止めて連れ去るだろう 人間の命は短い、それは妻になるなら気に入らない 今日は病院では無かった 部屋の窓から外を眺めている姿を見て、 その前へと白虎に乗ったまま姿を見せる 「わっ、えっ……」 「迎えに来た。星乃 明里……全てを捨てても、俺と来るか?」 美しい黒髪に、昔と変わらない大きなキラキラした目を向け 素朴ながらも自信と希望に満ち溢れた、心優しい彼女 俺はずっと見ていたから知っている 後は、君がこの手を取ればいいだけだ そっと向けた手に彼女はじっと俺を見てから 嬉しそうに笑って、手摺へと脚を掛け 迷う事無く胸へと飛び込んできた 「もちろん!大ちゃん!!」 「ふっ、愛してるよ。明里」 「私も、ずっとずーと。大好きだよ!」 フワリと浮かし、俺の前に座らせれば白虎は 夜空に向かって走っていく キラキラと輝く星は普段より一段と輝いて見えるだろう 神が夜空を通ったのだからな 「俺の名前を覚えてるか?」 「大ちゃん!」 「ふはっ、御前限定で許してやる」 「っ!?」 長く綺麗な髪に触れ、口付けを落とせば 驚いた表情から一気に頬を染めて照れた表情は 何一つ変わらず、照れ隠しに地上へと視線を落とした 「わー!綺麗!」 「その内、見慣れるさ。それに……」 「ん?」 「御前の心の方が綺麗だ」 「っ~!!いいから、そう言うのはいいから!」 「ははっ、可愛いやつめ」 もし、夜空を見上げて天の川が綺麗に見えたのなら それはきっと、神様が通ったのかも知れないな そう、思う奴には良いことがあると思うぞ 『 大ちゃんのお嫁さんになれますように 』 「( まぁまぁ聖天様は……これを26通貰って撃ち抜かれたんですね )」 「大ちゃん!こんなに巻物溜まってるよ!ちゃんと仕事してる!?」 「してるしてる!!」 「( これじゃ、織姫と彦星みたいですね。ふふっ )」
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