Anfang〜はじまり〜

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「天、明日は何時に家を出るんだ?学校まで送っていくぞ。」 旭と天は同じ学校への進学を希望しているが、旭はサッカーの特待での入学であり、既に受験を終えている。 いつものように過保護を発揮する旭は方向音痴の天が迷子になることを心配し、学校まで送るつもりである。 「もう旭は受験終わってるんだし、家でゆっくりしてなよー。大丈夫だって。それに僕だって見学会行ったことあるんだよから大丈夫大丈夫ー。」 「でもなー。お前いつもぽわぽわしてて危なっかしいし…。何よりも方向音痴なのが心配でたまらん…。」 「いやいやー。方向音痴って言ったって駅から10分くらいだし平気だって。それに僕βの男だし、いつまでも守ってもらわなくったって大丈夫だよ。」 可愛い女の子やΩじゃないんだし心配しすぎだよーと笑う天に旭はため息を吐く。 少子化の影響であるのかなんなのか、未だに分かっていないが、男女の性別に加わりα、β、Ωの第2の性が生まれて早100年。 異性恋愛が普通と捉えられていた古い時代の考え方や、少子化の影響から同性での恋愛は批判されることが多かった時代はもう随分と昔のこと。 第2の性の出現により恋愛の形態は多様となり、αとΩのパートナーだけでなく、αとΩ以外の同性パートナーも増加している。 βであっても同年代の中でも小柄で、涙ぼくろが色っぽい天は同性の男にも狙われやすい。 しかしながら本人には全くもって自覚はなく、群がる男どもを今まで散々蹴散らしてきたのは旭だった。 そんな旭からしてみれば天を1人にすることは心配であっても仕方ないというものである。
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