Anfang〜はじまり〜

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早めに家を出たことも幸いし、まだ受験開始に時間までには時間がある。 しかし現在地が分からず、受験校の規定により校内に携帯を持ち込めないため携帯は手元にない。 誰かに連絡することも地図アプリでルート案内を見ることも叶わないのだ。 人通りもなく誰かに尋ねることも出来ない天は通って来たと思われる道を戻ることにした。 それからしばらく歩き、これまで通って来た道が分からなくなり、時間的余裕がなくなってくる。 試験開始時間までに学校に到着することが出来ないのではないかと不安が強まり、涙を浮かべながら歩く天。 道が分からなくなってから何度目かの十字路に差し掛かったとき、1人の少年と交差した。 ようやく出会うことが出来た道行く人に天が助けを求めようと背を追おうとした時、その少年は驚いたように振り返った。 振り返った少年は天と同じ年頃で、ミルクティー色の柔らかそうな髪を持つ少年の空のように蒼い瞳に天の瞳は何故か引き寄せられた。 お互い見つめ合うこと数秒。 目の前の少年が何かを言った気がした天は、え?と聞き返す。 少年ははぐらかすように笑う。 「ところで、学生さんがこんな所でどうされたんですか?」 「あ!そうだった!あの、道に迷っちゃって……。今日入学試験なのですが、もう試験が始まっちゃうのに場所がわからなくて……。」 「もしかして、澄桜(すおう)の受験生だったりしますか?」 「そうです…。あっ!その制服って澄桜の中等部の…!」 「はい。もしよろしければご案内しましょうか?」 道を数本間違えていただけだった天は、思いの外受験会場の近くまで来ていたようで、少年の案内によって試験開始前に会場に辿り着くことが出来た。 彼のおかげで無事に辿り着く事が出来た天は何度も何度もお礼を言い、試験会場に向かおうと背を向ける。 「あの!これ。何かの縁だと思って貰ってください。受験頑張ってくださいね。」 立ち去ろうとした天の手を引いた少年は手に何かを握らせる。 「え?あの…?」 困惑する天は握らされたものを確認する。 そこあったのは蒼いお守り。 その色が少年の瞳の色のようだと自然と笑みを浮かべた天がお礼を言おうと顔をあげるともうそこにはあの少年はいなかった。 「お礼いい損ねちゃったなぁ…」 でも何故かあの少年にまた会うことができる気がした天は気持ちを切り替えて試験に望むのだった。
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