被食 7日目

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「んんんうっ」 男の声が急にくぐもった。かと思うと、自分を拘束していた力が抜けるのがわかり、男がソファ脇に落下した。 「ううううぐあああっ!」 何かよくわからないが、チャンスだ。 桐岡は慌てて起き上がると、背もたれ側に身をひるがえし、向こう側に着地した。 男はひっくり返ったまま足をバタバタと動かし暴れている。 その口からどす黒い血液が溢れ出してくる。 ―――なんだ?持病か?天罰か?……まさか。 何をすることもできずにそのまま呆然と見下ろしていると、口だけではなく、腹部から、胸から、次々にスーツに血が滲みだす。 そのたびに男が、 「うっううっ」 と悲痛な声を出す。 ゆっくりソファから回り込み、男を見下ろす。 ばたつかせていた手足はビクビクと痙攣に変わっていた。 もう意識はない。 屈んで覗き込む。 この男に何があったのだろう。きっと現実世界の方で何かが起こっているのだ。 次々と滲む血、内臓からの出血により喉にせり上がってきた血液。 刺されているのか? 誰に?どうして? 男の体の動きが止まった。 見開かれた目を見る。 「—————っ」 桐岡はその瞳に映っている光景に息を飲んだ。 「————どういうことだ?!」 その瞳に映っていたのは、先ほどまで自分を好き勝手犯し、殴りつけていた男の顔だった。
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