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「何か着るもの貰えませんか?」
「残念だが、お前に合うサイズのものは今ここに無い。――なあ、お前も魂を吸うのか?」
スパンと言い放って季逸はまた藍生に近付き、彼の顔をじっと見つめた。
「いや、普通に腹減ってるんですけど」
鋭い視線に藍生の目が泳ぐ。
「ほほう、仕方がないから飯をやろう。さあ、食え」
早朝だというのに、これから朝食を食べようとしていたのだろうか? と思われるほどキッチン横のテーブルにはパンやスクランブルエッグ、ベーコン、サラダなど朝食らしい料理が並べられていた。
「……いただきます」
季逸に「さあ、食え。さあ、食え」と催促され、藍生は遠慮がちに少し早い朝食を摂り始めた。未だに腰にバスタオルを巻いただけという格好である。
「不思議だな、普通に飯を食う。野菜も食うのか」
ぶつぶつと言いながら季逸が藍生の真横に立って何かをノートに記入する。
「見られてると食いづらいんですけど」
「記録を付けるのも科学者の仕事だからな……、あ……」
ノートから顔を上げると季逸は自分が思っていたよりも藍生に近付いていたことに気が付いた。間近に藍生の顔がある。
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