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「吸血鬼ですか?」
「鬼はお前だろう? 私は実験にお前の血液を使いたいんだ。お前みたいな自我を保った鬼を探してたんだよ。お前みたいな鬼は初めて見た」
自分には触るなと言っておきながら、狼男はベタベタと藍生の赤い角や黒い翼に触れた。藍生より背が低いためか背伸びをしている。
「お前、お前って俺には藍生っていう名前があるんですけど……」
「私は季逸だ。季逸様と呼ばせてやろう」
一通り藍生の身体に触れた季逸は満足したのか、白いバスタオルを藍生に投げた。
「あー、えっと、季逸様、俺の血を使って何の実験をするんですか?」
「なんかしっくり来ないな、様は要らない」
「どっちなんですか」
苦笑いを浮かべながら藍生は自分の腰にバスタオルを巻いた。
「私は吸魂鬼の遺伝子を弱体化させる研究をしているんだ。お前は自我を保っている。つまり、お前は唯一吸魂鬼の遺伝子に負けない人間ということだ。何日にも渡ってお前の血液を採取してやるから覚悟しておけ。ああ、その前に餌か」
「餌って……」
――この人、忙しないな。
家の中を行ったり来たりしながらノートに何かを記入する季逸を藍生は目で追った。
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