七夕の夜

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昼も夜もなく、常に星が輝く大宇宙。 彦星が銀河の向こうの織姫星に手を伸ばす。 愛しの織姫星は見えている。それなのに届かない。 距離にして14光年ぐらいだろうか。果てしなく遠い。 神はこんなに愛し合う者同士を裂くなんてなんと非情なのだろう。 こんなつまらない運命を描いたのは誰なんだ。 あの星だ。 彦星は宇宙のはるか彼方、青い星を睨み付ける。七夕。それはあの星の神が作った物語だ。しかし、それはいつか定めと化してしまったのだ。 織姫星は突然作られた物語に言葉を閉ざしてしまった。それはそうだ。いきなり淫らな交際をしているだの働かなくなったなどと、あることないこと言われたからだ。 あの星が憎い。 かつて、あの星からメッセージが送られてきたことがある。その返事をまだ返せてはいない。いずれ、思い知らせてやろうと思っている。 牽牛星、わし座の アルタイルは今日も地球に向けて、怒りの光を放ち続ける。
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