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「せんさん?!」
桜霞は肩を独占の揺さぶり続けるが、一向に応答はない。
首の懐中時計は紫光を放つがそれには気付いていないようだ。
段々と、独占の体が変化していく。
175程あった背がみるみるうちに縮んで、150もなくなる。
隆々までいかぬ程よい筋肉も、段々と落ちていく。体は華奢になる。先程までの胸筋は段々と丸みを帯びて豊満に。
髪は短髪だったのが肩までの伸びて、深い紫、先端は紅葉したかのような赤だ。
愛用の外套はその体躯には大き過ぎて、体は埋もれる。
懐中時計は手前を畝らせて大きな赤い宝石の付いた髪飾りとなった。
彼は……彼女になった。
「え、せんさん!?ゑ?」
桜霞も流石にこれには驚く。
男が女になんてあるはずがないのだもの。
目を覚ます。
「ん、ふぁ~あ。」
背伸びと欠伸を同時にする。
唖然とする桜霞をよそに、もにゃもにゃする。
寝起きだ。
口を開けたまま、余りの出来事に変な声がでながらも、桜霞は聞いた。
「え、あの、せんさん?」
「へ?せんさん?モノを?」
「え。」
「モノをそんなふうに呼んでるの!?これは中々。モノも将来安泰だなぁ。」
ここまでで桜霞はわかったことが一つあった。
この女性は妖艶である。あり得ない程に。
今の今まで色々な仕事をしてきたが、そのなかで出会った女性とは比べ物にならない程に美しい。妖艶だ。
問答を思い返す限り彼女は無邪気で純粋な筈なのに、妖艶なのである。
反対に思える言葉を兼ね備えた存在が目の前にいるのだから、困惑した。
「えと、君は確か…そう。桜霞くんだよね!モノと…じゃない、独占と仲良くなってくれてるんだ。ありがとう!」
「あ…はい。」
目は依然として奪われたままである。
ニコニコと笑う彼女は一体誰なのか。
「貴女は誰です?」
恐る恐る聞いてみる。
「私はラス……じゃない。寡占だよ。よろしくね。ところで、いい女の人知ってる?」
唐突ッ!
唐突である。
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