真っ赤な林檎が甘いとは限らない

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誰にも言えない秘密を抱えたアレスティンがオーサーと出逢ったのはイギリスのスタンドバーだった。 アレスティンは中国人のバトウに片想いしているというオーサーの独り語りで、新しい世界が拓けたのだ。 それは、アレスティンにとっては独りきりで生きながら社会に溶け込むしかないと諦めていた自分を大きく変えるものだった。 オーサーは、見た目は精悍だが、時折見せるはにかんだような笑顔が彼の朗らかさと優しさを表していた。 アレスティンは偶然同じテーブルについたオーサーとラガーを呑みながら、酒が進むにつれて一夜限りの行きずりの出逢いに終わるのが惜しくなってしまった。 アレスティンは宝石のような真っ赤な林檎に手を出したのだ。切って見なければ蜜があるかは分からない、食べてみたら酸っぱいかもしれない、有象無象の中からのたった1つの林檎に。
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