あなたのお願い事、俺が叶えます

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あなたのお願い事、俺が叶えます

『エントランスに飾る笹を提供していただける方を探しています!』 マンションの管理人室のガラスには、そう書かれたポスターが貼られていた。手書きの文字に笹と思われる絵が横に描かれている。 それを書いたのは、この【セブンサンセットマンション】の管理人、渡利健太郎(わたりけんたろう)だ。 【セブンサンセットマンション】は分譲型のマンションで築年数は十年。戸数は二十で、どちらかというと小規模のマンション。 渡利はマンション管理会社の社員で、五年前からここの管理人になっている。 渡利の人懐っこい性格と苦情などに対する的確な対応、そして何より子供達に人気があって、住人たちに好かれている。 そんな彼が今一番悩んでいるのは、七夕の日までエントランスに飾っている『笹』が入手困難になっていること。 毎年七月になったら笹と短冊を準備して、エントランスに飾るのだ。住人が願い事を書いて飾れるよう、笹のそばにある机にはペンもちゃんと置いてあり、短冊用の紐も準備していた。住人もだか、マンションを訪れた他の子供たちも毎年嬉しそうに願い事を書いては、短冊を括り付ける。 その時の楽しそうな笑顔を見るのが嬉しくて、渡利は毎年笹を自分が準備していたのだが、今年は笹を提供してくれていた知人が引っ越してしまい、準備ができないのだ。 (うーーん、困ったなあ) 色々、自分で回ってみたものの中々このご時世、笹を準備できるような人がおらず、渡利は最後の手段に出てみた。 それが冒頭のポスターだ。恥をしのでんで、マンションの住人に呼びかけるのである。住人のみならず、宅配業者や来訪者にも見えやすいところへ貼っているのだが二週間経っても何の連絡もない。 そろそろ諦めるか、と管理人室でため息をついていると、ガラス戸をコンコンと叩く人がいた。 「はい、何かご用ですか?」 ガラス戸を開くとその先にいたのは、赤髪の大学生。三階に住む清水至(しみずいたる)だ。 「笹、まだいります?友人からもらえそうなんですけど、どうしたらいいですか」 「えっ!」 思わず、渡利は管理人室から飛びてて至に詰め寄った。余りの勢いに、至が唖然としている。ごめんごめん、と頭を掻きながら渡利は笑っている間、至はポスターを見ていた。 至はあのポスターを見た時、友人のことを思い出したという。笹が自生しすぎて大変なんだという話をたまたま先日していたその友人に、笹を分けてもらえないかと問うと、彼は取りに来るのであれば持って行くのは全く問題ない、むしろ持って行ってくれと言ったのだ。 それを聞いた渡利は至に感謝しっぱなしだ。 「わざわざ友達に聞いてくれるなんて、優しいなあ!」 「毎年、エントランスに飾ってあったから。何となく」 赤い髪にピアス、腕にはアクセサリーをつけた至は、見た目にそんなことをしそうにない「チャラ男」に見えるだけに渡利は内心驚き、人は見かけで判断してはいけないなと少し反省した。 それから一週間ほどあとに至から笹が手に入ったと渡利に連絡が入った。 「ありがとう!わざわざ取りに行ってくれて!」 エントランスで笹の到着を今か今かと待っていた渡利は、笹を抱えて駐車場から向かってきた至に手を振る。蒸し暑い中、タンクトップに短パンという格好の至は持っていた笹をどさりとエントランスに置く。 「意外に重くて驚いた」 「あああ、言ってくれたら駐車場まで取りに行ったのに!」 笹を立てかけようと一人奮闘する渡利。あまりに立派な笹なので、中々立てることができない。タオルで汗を拭いていた至が見かねてそれを横から手助けした。 「今までの中で、一番立派かも!これならたくさんの人の『願い事』を吊るせるね」 笑顔でそう言う渡利に、至はそうですね、と笑った。 「バッチリ飾れたよ!ありがとう」 エントランスには毎年の笹よりも立派なものが今年は飾られた。作業をしている合間にも、子供たりが集まってきて、出来上がった瞬間に短冊をとり、願い事を書いている。母親達も集まり、あっという間に短冊のカラフルな色が、笹に飾られた。 嬉しそうに集う子供達の笑顔を、嬉しそうに渡利は眺め、そういえばと至の方を向いた。 「喉、乾いてない?飲み物買って来るよ。本当にちょっとだけどお礼させて」 「…ありがとうございます」 「何がいいかなあ」 「この先の自販機、濃いめのカルピス、ありましたよね。それでいいです」 「普通のじゃなくて、濃いめのやつ?子供だなあ」 至のオーダーに渡利は思わず笑ってしまった。 「…濃いめの方が、美味しいじゃないですか」 たくさんの短冊が飾られた笹を見ながら、二人でジュースを飲む。 「至くんも、短冊書いたら?何の願い事するの?」 ペンと短冊を渡されて、至はうーーん、と考える。やがてペンを走らせ短冊をそっと飾った。 「渡利さんは、何かありますか」 「俺?そうだなあ…あ!あるけどここには飾れないな」 「何でですか?よほどなんかマズイ願い事ですか」 渡利は少し言いにくそうにしていたが、やがて至の耳元でその願い事を囁いた。そしてそれを聞いた至が、思わず声に出してしまう。 「…はあ?『童貞卒業』?!」 「声がでかいよっ」 「いや、だって、その…」 どう見ても、渡利の年齢ならもう卒業しているだろう、と言いそうになって至はグッと我慢した。傷に塩を塗るような真似はまずい、と思ったのだ。 「なんか、タイミングを逃したんだよなー。今更なんだけどさ」 な、こんな願い事、書いて飾るわけにはいかないだろ、と渡利。至は手にした濃いカルピスを一気飲みして渡利にこう言った。 「渡利さん、ちょっと、うちに来ませんか」 *** もう定時で上がる時間だったし、部屋に行くぐらいいいかと思ったのが間違いだった。 「…ええと、至くん、この状況は、何だろうか」 部屋へ通されるや否や、ものすごい力で至に引っ張られてベットに押し倒された。そして有無を言わさず、至は渡利にキスをしてきたのだ。しかも情熱的で濃厚なキスを。 「童貞、卒業したいんですよね」 さっきまで舌を絡ませて来たその唇が濡れていている。そして右手で渡利の胸の突起を、左手で渡利自身に触れる。 「今日、親帰って来ませんから。俺が筆下ろししたげます」 「は、はあ?」 「男同士、気持ちいいですよ。実証済みですから安心して下さい」 「いや、ちょい、待ってええええ」 それから、渡利は初めて他人の手でしごかれ咥えられて、舐められた。男同士で勃つわけがない、と思っていたのに完全に準備万端な固さになって、一度頂点までいって、白濁したものを至の口内で出してしまった。 ベッドに仰向けになったまま、息を肩でする渡利に至は口元を緩めこう言った。 「…渡利さんの、濃いね。俺好み。カルピスと同じだ」 「やめろ…、ああ、やだあ…」 その後も至は執拗に渡利を愛撫して、また硬く復活していく。 「渡利さん、そのまま、俺に入れて」 至は渡利の体を跨ぎ、渡利の固いモノを自分の後ろに充てがう。その様子に渡利はギョッとした。男同士がそこを使うのは知っていたけど、まさか自分が入れるなんて! 「な、ちょ…うッ…」 クププ、といやらしい音を立てて渡利自身が至のソコに飲み込まれていくと、内側の熱に思わずイってしまいそうになった。 「あッ…、渡利さんの、大きいね」 奥まで入れると、そのあと至は自分から腰を動かしてピストン運動をしていく。これには渡利も抗いようがない。 (うわ…、ヤバイ…気持ちいい) 女の子ともしたことないけれど、この気持ち良さは何だ。一人でするときの何倍も気持ちが良くて、意識を持っていかれそうになる。 「渡利さ…、ん。気持ち、いい?」 髪を乱れさせて、蕩けた目を向けて来た至に、渡利はもう我慢ができず、至の体を反転させた。 「うわ、何…」 至が驚いていると… 「うあッ!あっ、っちょ、渡利さんっ…そんな、ああっ」 渡利が自分から至の腰をもち、激しく腰を動かしてきたのだ。何度も奥を突かれて、至が思わず大きな声をだす。 「あ、ああっ、ソコ、気持ちいいッ…あああっ」 「ごめん、至くんッ、もうで、る…っ」 渡利がそう言うと、思いっきり至の奥へと突いてその精を中で放出した。 「童貞卒業おめでとう、渡利さん」 ぐったりと横たわった渡利に、至が頭を撫でながらそう言ってきた。 「…お前なあ〜〜」 ちら、っと至の方を見て赤面する渡利。 「いいじゃん、気持ちよかったでしょ?俺もさ、願い事の一つ叶ったし」 「は?」 「渡利さんとこうなれて嬉しいよ」 不意をついて渡利にキスをする。そして右手がまた渡利のソレをしっかりと掴んだ。 「ちょ…」 「一回じゃ足らないでしょ」 至はニヤッと笑って渡利にもう一度、深いキスをした。 エントランスに飾れた笹の枝にぶら下がる至の書いた短冊。そこには『管理人さんと仲良くなれますように』と書かれていた。 【了】
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