私は、避難所で神様に出会った

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 その日の夕方、私は外の空気に当たろうと思い、体育館を出た。  あいにく星は見えなかったが、雲間からうっすらと月がのぞいて見えた。  それでも外はいい。短い時間でも解放感に浸ることができる。  気分転換を終え、体育館に戻ろうとしたときだった。体育館の陰から何か音がする。何だろうと思い、体育館の外の角を回って裏を見た。辺りはずいぶん暗く、体育館のギャラリーの窓から漏れる水銀灯の光だけが辺りをうっすらと照らしていた。  やがて眼が闇に慣れるにつれて、音を発しているのが裏の木の陰に寄りかかって立つ男性だと分かった。気付かれないように壁伝いに進み、体育館の外のボール止めから覗き見る。  福井さんだった。福井さんが誰も見ていないところで泣いている。泣き声は時折大きくなり嗚咽のようにも聞こえた。  私は、いつも気丈で明るい笑顔を振りまいている福井さんの心の奥底を見たような気がした。 .
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