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体育館のフロアーは段ボールで無秩序に区切られ、まるで迷路のよう。初めは、一旦離れた自分のスペースに戻るのにも苦労していた。今はずいぶん慣れたけれど……。
トイレはいつも混んでいて、おまけにずいぶん汚れている。だからここのトイレは好きになれなかった。
でもグラウンドに出て吸う空気は美味しい。久しぶりに見る青空。ほんの僅かに雲の隙間からのぞく青空だけれど、どれだけこれを見たかったことだろう。
避難してから2日目。私はトイレの洗面所に立ち、鏡を見た。
髪は乱れ、皮膚はぼろぼろと剥がれ落ちるほどに荒れている。おまけにニキビや吹き出物まで出始めた。そんなに高くない鼻の隣にもニキビが噴き出し、先端が白く変色しかけている。そっと触れてみるが痛みと違和感ですぐに指を離した。
「仕方ないよね、非常時だから」と独り言を言う。
配給で配られるのは今のところ乾パンとアルファ化米。アルファ化米は明日には底をつくらしい。食料も足りないが、娯楽はもっと足りない。慣れない空間で毎日を過ごすことが大変であることを今回の災害で思い知った。
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