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ある森の中。
木々の合間をぬって走る青年。頬に足にたくさんの切り傷を作りながら、肩で呼吸をしてる。
「はぁ、はぁっ!助けて!
助けて、天使様!!」
青年声を空に向かって上げた。声はそのまま広がるだけで返事をしてくれない。
そのまま走っていく、足が草木にもつれて転んでしまう。
「うぅ…。」
痛みを堪えて伏していると声が後ろから。
「ふふふん、うふふふふうん!」
「!?」
青年が振り返る。周りは木々ばかり。誰の姿もない。しかし声だけだどこからする。
「ふふふん、うふふふうん!追いついた。」
軽やかで妙に高い声が、青年の右から左からする。
「く、来るな!来るなあぁっ!」
青年が声を上げると、それを合図にしたように木の上から黒い翼が。そして青年の目の前に2メートル程の翼と黒い角を持った者が現れた。
「うぁぁぁぁっ!悪魔!」
青年の前で翼がくるりと回る。真っ黒な身体に角、赤い目だけが妙に目立つ。包丁の様な細くて鋭い爪を丁寧に舐めて、青年を見る。
「ふふふん、楽しいね。貴方も地獄に案内するね。」
悪魔は笑う。口が裂けるほど大きく頬を上げて笑う。
「助けて!天使様!誰かぁ!」
青年は再び声をあげる。
「ふふん、ここいらじゃあ、天使はいないの。でも人間の力じゃ我々には遠く及ばない。」
悪魔は青年の顔を目掛けてその爪を振り下ろした。
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