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その主はあたしの両肩を支えて、目線を合わせようとするから、
「みみ、見ないでっ!」顔を手で覆う。
「何故だ」
「恥ずかしいに決まってるじゃない。あんなになっちゃってもうぅ」
「恥ずかしくなど無い。やり過ぎたのは俺だ」
「そうじゃなくって。み……、乱れちゃって。引いたでしょう」
「下らない言葉に置き換えるのはやめろ」
手首に触れる力は強くないのに、あたしを身ぐるみ剥がしていく。
「見くびるな。俺は、どんなになったお前でも受け止める覚悟だ。半端な思いでお前に手を出してるとでも思ってんのか」
「おも、わない」
「そうだ。だから」急に言葉を止めた彼。顎を摘まんでふと考える仕草。
「先週、自分で言ったことを覚えてるか」
「あ」
『あなたに見てほしくないとこなんて、あたしには少しもないの。全部見せたげたい』
「覚えてますね。どうしましょう」
「全部見たい、と思うのは俺の欲望だ」
「直球ストレートですね」
「他にどう言えばいい。教えてくれ」
「愛してる、とか」
「安易に逃げるか」
「そんなことは」
「で、本当は何の小説を書いている」
自分の頬が固まったのが分かった。
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