#4 責任の所在

3/3
前へ
/852ページ
次へ
「あなたはあたしの声を聞きなさいよ」 「ああ、そうだな」 口許わずかに緩ませた彼、その行動は素早い。 「わ、きゃ」 いつもながらにお嬢様抱っこ。いつまで経っても恥ずかしい。 「あ、の。いまから買ってくるからそれでどうにかご容赦」 「この時間にお前を外に出させたくはない。危険だ」 「ふっ、なにそれ。ねえ、それより夕飯出来てるから」 無視。シカトのほうがよっぽど問題に思うんだけど。 「ねえってば」 こうなるとなにを言っても無駄だ。あたしは大人しく洗面台前に下ろされて、 「ひょわぁあっ」 下ろされた。ちょっと待って。「寒――」 脱がされた。包みこまれた。右の首筋に顔をうずめられて、あたしは必然と鏡のある右を向かされる。 一糸まとわぬ自分を、仕事帰りのサラリーマンが抱きしめる倒錯的な構図。 「ぬ、脱ぎなよ」羞恥を隠しきれないでいると、 「食わせろ」 もう二度と、彼のおやつに手を出すのはやめようと誓った。 *
/852ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1719人が本棚に入れています
本棚に追加