#6 役割への信念と陥落

2/4
前へ
/852ページ
次へ
「頼むから、寝てくれ」 「ふわぁ、い?」あくび交じりで答えれば、 「もう一度寝ろ。10秒でいい。起こす」 笑うなという方が無理だろう。 「何が可笑しい。俺は真面目に言っている」 「わ、わかったわかった。じゃあ、離して」 「離せだと!? お前は一体何を」 「わっ、わかったから、落ち着いて。とにかく寝るね。おやすみ」 「ああ、おやすみ」 まさか彼のおやすみを毎日聞ける日が来るとは思わなかった。どうしてあたしはこんなに幸せなのだろう。 目を閉じる。目を開いても最上級があたしを待っている。 神様、どうかこんな日々がずっと続きますように。 などと闇の中でひとり祈っていれば、 「スー……」 三秒で始まる安らかな寝息。あたしの背中をぴったり押さえていた手のひらが離れる。って、 “自分が寝るのかよっ!” 内心絶叫。瞼を上げると、予想通りの事実が認められた。 「あっきれた」 けど、彼の寝顔はそんな感情をも消しさる、圧倒的な魔力を放つのだ。 普段身につけがちな警戒心を極限までほどき、子犬のように無垢であどけない。
/852ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1720人が本棚に入れています
本棚に追加