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半ば無意識なのだろう。焦らされて逃げられると尚更欲す、剥き出しの本能。
何度も空を切る彼からは、地団駄の音までも聞こえるようで。眉間にぎゅっと皺が寄る。呼吸が荒くなるのがいつもより早い。
うたかたの眠り。それを妨げられただけでこんな風になるなんて。あたしを起こすのは大抵彼の役割だから、なんだか新鮮だった。
「寝起きは感じやすいんだね?」
唇を人差し指でなぞりつつ、余裕を込めて耳元でささやけば、
「普通にやべえ」
素直すぎて吹き出した。
まだ目を閉じている彼からは、隠しきれない色香が漂い、あたしがこんな風にしたんだ、と思うとまた与えたくなる。
音を立てながらフレンチキスを繰り返す。というか、段々あたしが止まらなくなってきて。
Tシャツの下に手を滑り込ませる前に聞いた。
「抱いて構いません?」
ようやく瞼を上げた彼は、上気して答えた。
「構わないが、後でもう一度寝ろよ」
あなたが寝なければね、と皮肉るのはよして、ひと思いにむしゃぶりついた。
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