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#7 「お前、どんな携帯小説を書いてんだ」
と唐突に問われ、ノートパソコンを打つ手が止まる。
「なに。いきなりどうしたの」
同じソファにかけてコントロールを持ったままの一言。ゲームにはとことん集中し、一時間やると決めたなら必ずそこで終える性分。
「ジャンルは。恋愛か」
あたしは頷いた。
書いている、とは話したけれど、面と向かって訊かれるのは初めてだ。
画面から譲らなかった視線。それをあたしに向けて真顔で蒔田さんは言った。
「ヤるのか」
あたしは吹き出した。
「って、そういう意味? なんて直球な」
「答えは」
「ちょこっと」
「女性が恋愛小説を書く場合、大方主人公は女で作者の分身だ。お前はどうなんだ。相手は。時代はいつだ。高校、大学、あるいは社会人か」
「蒔田さん、ちょっと落ち着いて」
彼の膝の上のショコラを起こす勢いだ。
「男は、俺をモデルにしてるのか。あるいは」
「……混ぜてるけど」
「混ぜてるだと!?」
と立ち上がった。降りたショコラ。あたしの前を通り抜けて裏でしちゃしちゃ、お水を飲みだす。
犬よりも冷静さを失った男が一人。
いつもと変わらず仏頂面なのだけど、なにかが違う。
「どうして怒ってるの」
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