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「おかしな話かもしれんが、あいつらを、家族のように思っている。消すことは出来ない」
「うん。分かる」
居場所がなかったあなたにとって、与えてくれたみんながどれだけ大切なのか。
ただ、別格がいたことを思い出して、切なくなっただけなの。
「お前も同じだ。俺の知らない過去があったからこそ今がある。どれ一つ欠けても、ここに居るお前は成り立たない」
取り繕いのない、嘘のない世界は時に残酷。
けど彼は、隠すことを。偽ることを断固として拒否する。
彼の正義を誇らしく思う反面、卓越した厳しさは時に苦しめているとも思う。
「と言いつつも」あたしの顎を掬い、向かせる彼の手。
微苦笑を浮かべてるようにも見えるけど……?
「過去どころか今のお前全部を塗り潰したい俺は、贅沢だろうか」
ぶわわっ、と頬に熱が走る。「あ、……身、に余る光栄かと」
「そうか」と瞼を下ろす彼。
あたしは目を閉じて結論を待つが、
「一つ、教えてくれないか」
ミリ単位の距離でおあずけ。
「小説では、どんな風に結ばれる」
「ふえ?」
「お前が理想とする形がある筈だ。それを叶える義務が、俺にはある」
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