#7 「お前、どんな携帯小説を書いてんだ」

4/10
前へ
/852ページ
次へ
変なところで真面目なのよね。冗談かと思いきや、この人は本気のマジだったりする。 「了解しました。ね、キスしないの?」 「事後のご褒美だ」 まったく。 自分からのキスを『ご褒美』と言い切るところに、この人の自信と不安が表れている。 ――ふたりっきり。 映画みてる。アタシたち。 内容? ゼンゼン頭に入んない。暗い部屋。パパとママはいない。 手が触れるか触れないか。ちょっとずつ近づいてるのは気のせいかな。 ちらっ、と隣見た。 ギュッ、と握られた。『えっ……』 マサキくんの、すごく真剣な顔。 『ごめん、ひなちゃんっ』 ソファーに倒されるアタシ、覆いかぶさる彼。アタシのセーターの下に手を突っ込んでくる。『アッ……』 感度の高い声が出ちゃう。ホックをはずされて、―― 「女を抱くのに『ごめん』だと?」 妄想は破られた。蒔田さんは忠実に実行しながらも、顔をしかめる。 「しかも、解せねえ。これじゃ野獣だ」 「あなたも大して変わらないじゃない」 憮然として彼は言う。「お前の目が求めているかそうでないかを見て、俺は判断している」 「えっ、そうなんだ。知らなかった」
/852ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1720人が本棚に入れています
本棚に追加