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くく、と笑った彼はケージをかしゃん、と締めてショコラに言う。
「三十分経ったら出してやるから、待ってろよ」
指の隙間から見えるのは、大人たちの痴態にもめげず、大人しく丸まる愛犬。まったく、情けない。
引っかかるのが、一点。
「三十分って、長くありませんか」
「気付いてないのか」
平然と蒔田さんは、
「途中から全部敬語だぞ」
あっ。
「べっつに、意識なんかしてないし」
「答えはこの後聞かせてもらう」
「鬼よ、あなたって鬼。この鬼畜」
「その顔と言葉は逆効果だ。何か萎えさせることでも言ってみろよ」
「ええと、あ、あっ!」
あたしは鏡を指した。
「長谷川祐がこっち見てる」
鏡にはだかの背を向けていた彼は、鏡の中の彼自身、そしてあらわなあたしと目を合わせて、不敵に笑った。
「見せつけてやる」
もう、馬鹿馬鹿あっ!
と思ったが遅く、あたしはくもり扉の向こうに消えて行った。
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