#7 「お前、どんな携帯小説を書いてんだ」

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くく、と笑った彼はケージをかしゃん、と締めてショコラに言う。 「三十分経ったら出してやるから、待ってろよ」 指の隙間から見えるのは、大人たちの痴態にもめげず、大人しく丸まる愛犬。まったく、情けない。 引っかかるのが、一点。 「三十分って、長くありませんか」 「気付いてないのか」 平然と蒔田さんは、 「途中から全部敬語だぞ」 あっ。 「べっつに、意識なんかしてないし」 「答えはこの後聞かせてもらう」 「鬼よ、あなたって鬼。この鬼畜」 「その顔と言葉は逆効果だ。何か萎えさせることでも言ってみろよ」 「ええと、あ、あっ!」 あたしは鏡を指した。 「長谷川祐がこっち見てる」 鏡にはだかの背を向けていた彼は、鏡の中の彼自身、そしてあらわなあたしと目を合わせて、不敵に笑った。 「見せつけてやる」 もう、馬鹿馬鹿あっ! と思ったが遅く、あたしはくもり扉の向こうに消えて行った。 *
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