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どうにも、口を攻めたがる日のようで。全体重を乗せず、ちょっとの重みを与えるのがいじらしい。
「蒔田さんの、キス魔」
黙った。しかめっ面で。
「困ると黙るのね」
「聞き捨てならねえ」
「なら、言い返してみたら?」
すると彼は、あたしの耳珠までもぴっちり押さえつけて、
「ひゃうっ」
喉仏を軽く食む。けほっ、と小さな咳。正面に戻り来た彼がまたも、顔を近づけるものだから、
「移るから、あんまりキスしないで」
「移して治せ」
だから、か。
尚更、駄目。
同時に生まれた感想を口にすることはならなかった。
背けた顎を摘ままれて、1ミリの余地も残らないほどに抱きすくめられ、本日何十回目ともつかぬ接吻に身を捧ぐと、今度は赤い星を瞳の中に見た。
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