#8 風邪が治りかけた貴女に

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どうにも、口を攻めたがる日のようで。全体重を乗せず、ちょっとの重みを与えるのがいじらしい。 「蒔田さんの、キス魔」 黙った。しかめっ面で。 「困ると黙るのね」 「聞き捨てならねえ」 「なら、言い返してみたら?」 すると彼は、あたしの耳珠までもぴっちり押さえつけて、 「ひゃうっ」 喉仏を軽く食む。けほっ、と小さな咳。正面に戻り来た彼がまたも、顔を近づけるものだから、 「移るから、あんまりキスしないで」 「移して治せ」 だから、か。 尚更、駄目。 同時に生まれた感想を口にすることはならなかった。 背けた顎を摘ままれて、1ミリの余地も残らないほどに抱きすくめられ、本日何十回目ともつかぬ接吻に身を捧ぐと、今度は赤い星を瞳の中に見た。 *
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