#9 風邪を移された貴方に

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普段と違う明日が訪れることに僅かながら安堵。大部分は、楽しみを奪われた気分が支配。 右向けば、右肩を下にそっぽ向く彼。 「マスクまでしなくても」 完全ガードを固められているようで、なんだかね。 「顔にマスクの線残っちゃうよ」 「上から重ねて隠せば良いだけの話だ」 「……かもね」 そう、この人はどう見られようが構いやしないのだ。 最大級に素晴らしい外見をしておきながら。 頼りがいのある背中。女であるあたしとはまるで違うからだ。白い喉仏、綺麗な鎖骨のライン。思ったより厚みのある胸板が恋しくて。 「離せ」 「寂しい」 その背に、頬をくっつける。 「顔、見せて」 彼は首を振った。「仕方ねえだろ」 「あたしに移して治せばいいのに」 「社会人失格だな」 「妻としては?」 黙り込む。熱い、すこし熱がある。布越しにもそれは分かる。 だから、期待してはなかったのだけれど、 「愛している」 からだの前面に回した手に、彼の手が重なる。 「一人で寝れねえくらいだ」 あたしの存在を確かめ、絡ませる指と指。 「一臣さん」 ふう、と息を吐く。 「こっち向いて」
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