#10 夫が掃除する間にしてはならないこと

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「よーし、ショコラ。お利口さんだね」 頭をぐりぐり撫でる。犬がこんなに可愛いだなんて、彼に会わなければ知らなかったことだろう。 だから、つい夢中になっていて。 気づくのが遅れた。 「ハウス」 猛ダッシュでケージに入る彼。いや、あたしが神経を集中さすべきは、 「どういうつもりだ」 背後から冷気漂わせる彼の方だろう。 「なにかお怒りですか、蒔田さん」 無言の圧力。視線で逃げると、様子を見守るショコラと目が合った。蒔田家におけるあたしの身分は、下手をすれは彼より下なのかもしれない。何故なら、 「うわっ」 床に押し倒された。あたしの後頭部を片手で包むオマケつき。舌を噛まずに済んだのは単に、慣れてるから。 「ちょっ、なんで怒ってるのよ」 「怒る、だと?」 体重をかけられて顔を歪ませるあたしを口角だけで笑う。なんて男。 「そう思うんなら、心当たりを言ってみろ」 「ええっと」 ふっ、と耳に息を吹きつけられる。 「そ、掃除してくれてありがと、うっ」 軽く噛まれる。舌で耳の後ろをなぞられる。 「お利口さんってショコラに言った。あ……」 首筋を這う、生温かさ。
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