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「よーし、ショコラ。お利口さんだね」
頭をぐりぐり撫でる。犬がこんなに可愛いだなんて、彼に会わなければ知らなかったことだろう。
だから、つい夢中になっていて。
気づくのが遅れた。
「ハウス」
猛ダッシュでケージに入る彼。いや、あたしが神経を集中さすべきは、
「どういうつもりだ」
背後から冷気漂わせる彼の方だろう。
「なにかお怒りですか、蒔田さん」
無言の圧力。視線で逃げると、様子を見守るショコラと目が合った。蒔田家におけるあたしの身分は、下手をすれは彼より下なのかもしれない。何故なら、
「うわっ」
床に押し倒された。あたしの後頭部を片手で包むオマケつき。舌を噛まずに済んだのは単に、慣れてるから。
「ちょっ、なんで怒ってるのよ」
「怒る、だと?」
体重をかけられて顔を歪ませるあたしを口角だけで笑う。なんて男。
「そう思うんなら、心当たりを言ってみろ」
「ええっと」
ふっ、と耳に息を吹きつけられる。
「そ、掃除してくれてありがと、うっ」
軽く噛まれる。舌で耳の後ろをなぞられる。
「お利口さんってショコラに言った。あ……」
首筋を這う、生温かさ。
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