#4 責任の所在

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「しないってば。大体二時間前に食べたん――」 手が離れた。唇が離れた。 そして、あたしからからだを離した彼は、目も合わせず歩きだす。 「え、ちょ……」 スーツのジャケットを脱ぎ、無造作にベッドに落とす。 怒ってる? ネクタイを緩める、均整のとれた肢体。白いワイシャツの背中、細いウエスト。って、見惚れてる場合じゃなくて。 ショコラが吠えている。 この人の帰宅をあたしは出迎え、ラブラブしながら居間に向かい、ショコラをケージから出す。 だが、本日、真っ先に冷蔵庫に向かった彼。よっぽど楽しみにしていたと思える。 一言も口をきかずにお風呂に向かおうとするものだから、 「やだ、待って」 止めに入った。 「そんなに怒ることないでしょう」 いつもなら直ぐに振り返ってくれるのに。 「あなただってあたしのラムレーズン食べたじゃない」 「お前が食えねえと言ったからだろ」 「食えねえじゃない、『食べない』って言ったのっ。楽しみに取っといたのに」 「その腹いせが、抹茶強奪か」 振り向いた彼は、真顔で言った。 「報復とは、人類が犯す最大の過ちだ。世界の声を聞け」
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