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「……ねえ、今帰る場所ないんだよね?」
「ああ」
タクはそれだけしか応えなかった。それが何処かもどかしくてつい、ぶっきらぼうになってしまう。
「困るでしょ」
「まあ……、そこそこ」
ここまで言っても、タクは私の言って欲しいことに気が付かない。
いや、気が付いて、敢えて言わないのかもしれない。一度閉じかけた口を開いて、薄く息を吸った。
「……あのさ、一緒に暮らそ」
「──いいよ」
何気ない。今度も、結局私からだった。
でももう、それでもいいかと思ってしまった。
ダメなところも変なところも欠点も、好きだと言うだけで肯定感に替わる。そんなところも、全部好きだと思ってしまう。
恋なんて病気だ。本当に、バカみたい。
「星、きれいだね……」
「──月も綺麗ですね」
どうして敬語。一瞬思ってから、その意味に気が付いて、隣で寝転がってるタクの横顔を見る。
タクは相変わらず、タバコを吸っていた。寝っ転がって吸うなよ。火傷しそうで見てて怖い。
そんなタクが、出来る限り私に煙が行かないようにしてくれているのを知っている。私が相談しているときは、なるべくタバコを吸わないでいてくれていることを、知っている。だったら吸わなければいい話なんだけど。
私の視線に気が付いたタクが、いつもよりちょっと空々しく言う。
「どうした?」
「やっぱり、好きだなって思って」
「ん。知ってる」
ふてぶてしくそんなふざけた回答をするタクは、やっぱりどこをどうとっても腹が立つ。
でもどうしてか、私はそれに笑ってしまった。
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