オデッセイの旅路

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 私の彼氏──タクは一言で言ってしまえば変人だった。  どう変人かって言うと、シャワーの代わりとか言って豪雨に当たってたりだとか、ちゃんと貯金してるっていう貯金箱の中身が、蛇の抜け殻だったりするような変人だ。  自分で言っていても何を言ってるか分からない。  浮世離れしている、の方が近いかもしれない。子供じゃないんだから、蛇の抜け殻を貯金なんて表現はしないで欲しい。心臓に悪い。  しかも、夢はストリートミュージシャンだ、なんていう人でもある。夢を見るのはいい。タクの歌は私も好きだ。でも、なんでストリートなんだろう。普通にミュージシャンって言わないとことか、ホントに謎だし。  私がため息をつくと、友人は仕方なさそうに笑って見せる。  こういう話を友人に話すことはよくあることだった。その度に、なんだかんだで話を聞いてくれる友人は優しいと思う。 「リセはさ、その、タクさんだっけ? その人のどういう所が好きなの? リセの方から告白したんでしょ?」 「そうだけど……。優しい、とは思うよ。ちょっと変だけど。でも、悪いところの方がずっと思いつくんだよね。暗いし、口数少ないし、顔色悪いし。ヘビースモーカーだし」 「ああ、まあね……。リセ、彼氏と会った後タバコ臭いし」 「こないだもさ、アパートの家賃延滞したせいで追い出されたんだって、数か月たってから言い出すのよ」 「え、どうしてるの。それ」 「知らない。なんかネカフェとかはしごしてるんだって」 「うわぁ、図太いなぁ、リセの彼氏。普通もっと動揺しない?」 「私もそう思うよ」 「それで、リセは彼氏のそういう、なんて言うのかな。ちゃんとしてないところ? が嫌だったの?」 「そうじゃなくて……」  ため息を吐く。  思い出したのは数日前、丁度タクからアパートを追い出された話を聞かされた後のことだった。
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