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タクは変わらず空を見上げていた。何となく悔しくて、何を考えているか分からないタクの思考を覗き込もうとする。
「……なに考えてるの?」
「今は……、この夜空の向こうで、宇宙のオデッセイは今頃何処を旅してるんだろなって、考えてた」
「宇宙のオデッセイ?」
「知らない? 火星にいった探査機の名前。2001マーズ・オデッセイっていうの」
「聞いたことない……。何で知ってるの」
「こないだオデュッセイアのこと調べてたら、一緒に出てきた。オデッセイってオデュッセイアの別名の一つらしいんだよな」
何で調べてたんだろう。案の定その辺の説明はない。相変わらず、タクの考えていることはよく分からない。
「オデュッセイア……ってあれだっけ。ホメロスの叙事詩……」
「そう。よく知ってるな」
「こないだ講義で言ってたの。タクと違って、ちゃんと講義出てるから」
私の皮肉もものともせず、タクは「あの話結構好きなんだよな」なんてことを言う。
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