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強い意志で溜息なんかは決してつかずに、ぐいっと生ジョッキをあおったら、中島くんがおしぼりを丸めたりほどいたりしながら上目遣いでこっちを見てきた。
「なんか機嫌悪くね? 俺のせい?」
「いいえ。顔面格差についてふと思いを馳せていただけですから」
「顔面格差って!」
キャハハと女の子みたいな声を上げて中島くんが顔をくしゃっとシワまみれにする。
で、それがまたなんか犬みたいで、かわいいんだからたまったもんじゃない。
「そんなことないよお。佐藤だってカワイイじゃーん」
「何その女子高生みたいな雑なフォローは」
「雑じゃないもん♪ 口下手なダケだもん♪」
もんってなんだよ、三十路近い成人男性の使っていい語尾ではない。
ついに溜息をついて私は幸せを逃す。
ついでについた頬杖で、ほっぺたに鎮座ましましたニキビちゃんに触ってしまってますます気分が下がってしまう。
人間顔がすべてじゃないよね。
だけど、それでもやっぱり、せめて肌くらいはキレイだったら、あたしだってもう少しは自信がつくかもしれないのに。
「ねー中島ぁ」
「なあにー、佐藤ぉ」
「やっぱり女の子ってさ、肌がキレイな方がいいと思うよね」
「え? なにそれいきなり!」
ハトが枝豆鉄砲、などとわけのわからんオヤジギャグを放ちながら、中島くんはまた枝豆を口の中にほうり込む。
ほんとこいつ枝豆好きだな。
殻入れのうち三分の二、いや四分の三は中島くんが捨てたやつだと思う。
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