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「時代は令和になったって、女の子は美肌がイノチよ。そだ、ご飯終わったらママが久しぶりに占ってあげるから」
「結構です」
「そそ。実に結構な占いよー! あっ、パパ、そういうことだからお皿洗いお願いね?」
「え」
呆然としているパパには目もくれずに、ママはあたしを窓際の小テーブルへ連行する。
うちのママ、占いが趣味なんだ。
でも一度も当たらないしそもそも、占って欲しいなんて一言も言ってない。
やめよう押し売り。キャッチセールスは条例で禁止されております。
「いいってば」
「遠慮しないでよー。親子でしょ。というわけで早速。中島くんの誕生日は? 血液型は? っていうか長男? 婿養子可? 何県出身? 名産品何?」
嬉々としてタロットを並べまくるママは「きゃー、やだ相性ばっつぐぅん!」などと言って喜んでいる。
……あのー、ママ? それほんとに占いですかね?
なんか普通にママの都合では。
というか都合のいい願望では。
こうなったママを止められるのは、関東大震災か核ミサイルくらいのものなのであたしは観念して椅子に座って好きなだけ占わせてあげることにした。
パパはしょんぼりと、でも大人しく三人分の食器を運んで、黙って一人皿洗いをしていた。
パパ……。
でもまあ、あたしが洗わなくて済んだわけだし、別にいいか。
人生って、きっと積極性が必要なんだよ。たぶんだけど。
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