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星の屑が集まり、プラネタリウムのドームの様な大きなスクリーンになり、そこにぼんやりと何かを浮かび上がらせる。織女をしている織姫の芯のある瞳が浮き上がった。
「久しぶり、彦くん、どう変わった事はあった?」
彦星は着物の袖から子牛のアップの写真を見せる
「ああ、この間子牛が生まれた。今度、織ちゃんにも見せてやるよ。将来は星座デビューさせようかな、なんて……。で、織ちゃんは? ちょっとイメージ変わった?」
「おっ、着物、新調したんだ」と織姫が言う。
「気がつかなかったら、今度会った時に殴ってやろうか、って思ってた」と、織姫が白い歯を見せ、ピンク色の舌を小さく出した。淡い紫色の生地の着物に七色に輝く羽衣を羽織った織姫がアップになる。
「ちょっと暇だったんでさ、星の屑織り込んだ。ほら、分かる?」
「うん……綺麗だね」
織姫が照明を消した。辺りが深い紺色の闇に包まれた。その闇の中に七色に輝く星々が彦星の手で掬い取れるのではないかと思うほどにスクリーンいっぱいに広がる。
彦星は息を飲んだ。
「ああ、彦くん、会いたいな。こんなリモートじゃなくて……。直接会ってハグしたい」
スクリーンに灯りが入った。
芯のある織姫の瞳から涙が溢れる。
彦星は宇宙を見上げた。紺色の宇宙の中に浮かぶ天の川の周りに集まった金や銀の星々が広がる。そこから一際輝く流星が弧を描いて滑った。
おわり
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