人形を愛する国

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 美しい国と称されるこの国は、表向き民主政治という形を取りながら、100年前の未曾有の経済危機を建て直した英雄、園田一樹氏が退いた後、息子の和光氏が支持を集め、次に孫の剛氏と続き、現在は曾孫の廉氏が首相として政権を担っている。  殆んど世襲制のように二世三世と引き継がれ、首相のバトンが渡される度に発言権と影響力が及ぼす範囲は膨れ上がっていった。  園田一族一党に権力が集中し、独裁と囁かれる程に内実は民主政治とはいえない有様だった。  但し「独裁」という生々しい言葉は、この国の「和をもって尊しとなす」という基本の精神により、「出る杭は打たれる」かの如く国民の大半は中流横並びで、「臭いものには蓋」をしているせいなのか危機感なく政治に関心薄く、誰が首相になっても、どの政党が国を担おうとも身近に危険が迫る事はないだろうと、まるで絵に描いた牧歌的で平和な風景が何時までも続くと信じて疑わない国民性によって包まれていた。  この国におけるアンドロイドの普及率は今や西の大国を抜いて世界一位である。  それに伴い、様々な問題が浮上した。
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