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 六限に講義が入っている曜日はそこまで多くないし、自分用のパソコンを持っているので課題は基本的に家でこなす。  そもそも授業後は奨学金と仕送りでは賄いきれない生活費を稼ぐ為にバイトをしているのだ、授業後に長居する理由はないのである。  そんな千鳥だが、この異変は察知することが出来た。何故かは自分でも分からない。ただ、酷く胸騒ぎがした。  眉を寄せながら、千鳥は周囲を注意深く見回す。何かある筈なのだ、一瞬でおかしいと気付いてしまう程の、何かが。  その正体は、案外早く見つかった。  千鳥から少し離れた所に佇む大きな建物。短大と四大の敷地の丁度境目に建つそれは開設間近の新棟だった。  建物自体は四大の管轄だが、一階は新しい学生食堂になると聞いているので千鳥は新メニューをひそかに楽しみにしていたのだ。  歴史を感じさせる他の古い建物と違い、この建物は最新の設計と最先端のデザインが取り入れられているという。  ベージュ色の外壁は幾何学模様に分割され、その間からは内部のガラス窓が覗く。確かに目新しい印象だった。
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