dropped

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***  貴方の笑顔を一目見た時から、ずっとそれが頭に残って離れません。  一目惚れしました、なんて言っても信じては貰えないでしょう。今すぐ彼氏になって下さい、と言われても困らせるだけなのも分かっています。  まずはお友達から始めては頂けませんか?  淡いピンク色の薔薇があしらわれた可愛らしい便箋に淀みなく文字が置かれていく。  傍らに置いてあるスマホのメモ機能に書かれている文章をただ書き写しているだけだ。その為思考しながら万年筆を走らせているわけではない。  便箋の埋まり具合が中盤に差し掛かった所で、それまで黙って千鳥が書く様を眺めていた人物が「へえ」と感心したような声を上げた。 「さすが、評判通り綺麗な字だねえ。羨ましい」 「そうかな」  手は止めないまま、加えて便箋から目を離さないまま返す。すると相手に「あたしなんかよりも断然綺麗だって!」と何故か力説されてしまう。  その様子がなんだか面白くて、千鳥は笑いつつも礼を言った。どんな形であれ、褒められて悪い気はしない。
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