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 彼女は千鳥の友人ではない。同じ短大生ではあるが文学部に在籍する千鳥と違って彼女は教育学部だし、共通の講義があるわけでもなく。文字通り赤の他人に近い関係だった。  知り合ったのもつい三十分程前で、空きコマを利用して早めの昼食を摂っていた千鳥に声をかけてきたのだ。  短大に入学して一ヶ月半。こうしたことは千鳥にとって今や珍しいことでもなくなりつつある。 「えっと、同学年で合ってたよね?」  学部と名前は聞いていたが、そういえば学年を聞いていなかった。  イマドキの大学生、という言葉が良く似合う彼女は明るい茶髪の巻き髪にピアス、メイクとしっかり決めている。  服装も今年のトレンドを上手く取り入れているのが一目で分かるし、何より良く似合っていた。  ただ、そんな華やかな見た目に反して話すととても人懐っこい感じなのだ。親しみやすさからなんとなく敬語を外して話していたが、もし先輩だった場合は少し気まずい。  千鳥の疑問に彼女は「そだよ。教育学部一年の、長原礼奈(ながはられいな)」と返してくれた。同学年ということが分かり千鳥は内心安堵する。
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