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「最近、キレイになった?」
急にそんなことを言うようなキャラではない相手の言葉に思わず、キーボードを叩く手を止める。
暗い室内、二人で残業をしている静かな空気を破る言葉が、まさかそんな言葉だとは思わなかった。
ディスプレイから視線を外す。左斜め前の席に座る上司に目を遣ると、まじまじと此方を見つめていた。
「……それ、ナンパですか。今時、流行りませんよ」
「いやいやいや。そういうんじゃなくてさ。素直にそう思っただけ」
いいから仕事してくださいよ、とわざとらしく溜息を吐き出す。
すみませんねーと笑う上司から、ディスプレイへと視線を戻す。
席が離れていてよかった、と思う。
真っ赤になった顔を見られるわけにはいかない。
どうせ叶うはずのない片想いだ。
そう思いながらも、自分の肌に気を遣い始めたのはこの上司のせい、否、おかげと言わざるを得ない。
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