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2017年7月10日の午前7時半。あの時、ワタクシ涙なんか出なかった。腕の中。最期の一息。口もとに水をティッシュで運んで看取って。新しく寝床を設えて。シロコさんに、行ってきます早く帰るからね、そう告げてワタクシ仕事に行ったの。だってもうシロコさんにしてあげられることがひとつもない。傍に居ても意味が無い。涙は出なかった。ああ、だけど今泣いている。お葬式はうろ覚えだ。他の猫たちの時は思い出せるのに。連絡した住職さんに指定された日を一日ずらしてもらって、それでもさらに一日とお願いして窘められた。これはただのいれもの。シロコさんだった抜け殻。わかっていてもどうしようもない。口からウジがわくの耐えられないでしょ、皮はいで剥製にしたいの?と現実的な話を出されて諦めがついた。もつべきものは冷静な友人だ。
『タマの肖像画を描く。描くことで治療される。』と横尾さんは書いている。治療。ペットロスからの立ち直り。横尾さんは前に進んでいる。でもずるい。彼はタマにぼくもじきに逝くからね、とさらりと告げてしまえるんだもの。
いつか。長いながいシロコさんとワタクシの物語が描けたら、シロコさんを想い出にしまえるのに。そんなこと望まないでいたい。今は、じゃなく、ずっと望まないでいたかったの。涙はすぐに乾く。乾くかわりにすぐにまた泣く。シロコさんの思うつぼなんでしょ?泣いて忘れて新しい仔を助けたらいいじゃない?いやよ、もう助けない。白猫と駄犬を見送ったらワタクシ身軽になるんだから。
今年も手向ける花はヒマワリ。シロコさんはヒマワリの種が好物だった。
猫を喪した飼い主さん。どこかでタマの画集を見かけたら手に取ってながめて。
無理せずあなたが前に進めますように。
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