金茶色

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「生後2ヶ月半から3ヶ月かな。」 「3ヶ月」 そうだ。違和感はこれだった。4週齢に満たないサイズなのに、耳が丸くない。爪が出しっ放しじゃなかった。ずっとひっかかっていた。そして目ヤニを洗い開くようになった目は金色だった。そんなバカな。このサイズの仔猫の目は青いのだ。先天的な盲目の仔猫でも青かったし両目の色がいずれ違ってきても仔猫は青いのだ。間違いなく。じゃあコレは。 体重僅か420グラムの生後3ヶ月の猫だ。 朝は、一晩テリトリーを探したのか、玄関の靴箱の下の、7センチピンヒールサンダルのつま先部分にくるりと納まって長い尻尾を襟巻きにし寝ていた。ケーキ箱で連れ帰ったのは壮絶に生き延びた猫だったらしい。 病気の検査とワクチンをしてもらって数日後。口から大量に寄生虫を吐いた。赤ちゃん猫のようにお腹がぽっこりしていた原因はコレだったのか。のたうつ寄生虫の気持ち悪い状況に悲鳴をあげたが、他の猫たちへの二次被害を考えると気持ち悪さで涙ぐんでも急いで片付ける。共用トイレも隈無く洗い消毒した。全猫診察してもらい処方された虫下し薬。飲ませるのに格闘するのは翌朝からで、排出された寄生虫を処理するのに気持ち悪く涙ぐむ日が続いた。 まともに食べられるようになったから寄生虫も元気になったんだろうと獣医さんは言った。飢えて死にかけて。やっと口にした栄養は奪われるスパイラル。壮絶すぎる。 金茶色の猫はまんまるで大きな目をしていたので、デメキンと名付けた。ピンクの鼻の脇にちょんとある金茶色も愛らしく器量よしなのでいずれお嫁に行くだろう。里親さんからステキな名前をもらうといいよ。 二週間で体重は600グラムになった。うちの1歳猫が4週齢の仔猫だった頃の体重だ。相変わらず三毛猫には認められてないが、果敢に1歳の猫達にのっかりにいく。主に寝てる隙に。起きているときはデメが近づくと逃げていくからだ。兄弟猫同士の隙間に潜り込むのを続けるうちに三男坊のグレイが起きても寝たふりをするようになった。全身を乗せしがみつくデメをふりほどかず、三毛猫の唸り声をやり過ごし、デメはますますべったりになった。遊んで寝て。食べて寝て。いつの間にかグレイを介して周りが馴染んでいった。
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