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星降る夜に2 制作:kaze to kumo club
星降る夜に……?
-序章-
二年前から、僕には……時間がなかった。
時は……クソ暑い夏の7月。
島崎礼(しまざきれい)、17歳は……大学生にならるかどうか……?
わからない命の期限を……医者から宣告された……ばかりだったのだ。
子供の頃から心臓がポンコツで、運動らしい運動もできなかった。だから、元気な同級生たちが笑顔でグラウンドを駆け回る姿は、どこか……自分とは違う世界を……観察させられているみたいに思えていた。
「島崎は……今日も見学か?」
「……ああ〜……」
友人の田中真司(たなかしんじ)が、流れる汗を手で拭いながら言う。キラキラと輝く笑顔と白い歯が、嫌味なほど眩しい。
自分とは桁違いの健康に守られた身体と力強い意思。そんな得体の知れない勢いが……僕に迫る錯覚を感じさせる。
不健康ゆえの軽い嫉妬心……??
苦笑いしてしまう己れの顔を隠すために、視線を両手で組んだ膝元に落してみる。
「ああ〜、キッちいー! こんな暑い日にサッカーなんてするもんじゃねえよなあ〜」
「まあ〜そうだね、田中君」
あははは……と笑う田中の横で、夏の日差しをさけようと、背後にそそり立つ、何本かの松の木の影で僕は……何一つ感じてはいないかのように……彼の無神経な言葉に……合図地を打っていた。
まあ〜、無理も無い事だ。彼に分かるはずもない。
後……二年半もすれば……このコンクリートの石段にさえ……僕は座っていない。そんな……はかなげ気持ちなど……健全なる学友に理解できはずはないのだ。
いや、むしろ……分かって欲しくも……なかった。
僕は死ぬ。
それだけは、なぜか……運命だと……受け入れていた。ドナーと言う奇跡が……僕の前に降臨しない限り……確実に来る未来だからだ。
そんな気分で学校に通う……優等生の心など……誰が帰り見ると言うのか?
まして、不幸を伝染させるみたいに……自ら自分の悲劇を宣伝して回る気にも……なるはずもなく……僕はただ……日々をダラダラと……過ごしているだけだった。
あの……ミルクと……出会うまでは……。
そうさ!
ミルクは僕の救世主!?
愛すべき……僕の全てだった事を……ここに宣言しておきたい。愚かなる自分の……黒歴史して……??
‐2p‐
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