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「へ?」
「その写真は確かに君のお父さんです。ですが、お父さんは今、お休みです。起きるまで中で待ってください」
男に言われるまま猫を抱いて中に入る。まさか、猫に懐かれるやつに悪い人はいないなんて言うんじゃないだろうなと思いつつ、通された部屋のソファーに座った。
「先に言っておきます。私は君のお父さん、アミンさんのボディーガード兼看護師です。だからご子息を名乗る方でもお通ししませんでした」
「ボディーガードって。父は狙われているんですか」
「はい。革命によって権力を失った者から狙われています。お父さんは革命に深くかかわり、革命後は外交官になりました。非常に優秀な方でしたが、体を壊して引退しています。体を壊したのは暴漢に襲われた傷が元です」
「父はだから僕と母から遠ざかったんですか。命を狙われているから」
「ええ。引退しましたが、アミンさんは未だ影響力を持っています。最近は減りましたが、いつ襲われてもおかしくない」
「そうですか」
衝撃的過ぎて頭がついていかない。
「後のことはお父さんに聞いてください」
「待って」
部屋を出ようとした男を止める。
「なんですか」
「僕が息子だとどうしてわかったんですか。僕と父、全然似てないですよね。だから最初、追い返そうとしたんでしょ」
「ええ。でも間違いでした。あなたはお父さんによく似ている。君がご子息だと私は確信しました」
「だからどこが」
「猫を抱いてほほ笑んだ時。笑みの向こうにお父さんが見えた」
「……」
「不思議ですね。君の笑い方はお父さんそっくりですよ」
ドアが開く。道中さんざん見て来た男が入ってきた。やっぱり僕と似ていない。でも、どうやら僕の中にこのひとがいるらしい。そう思った瞬間、僕はようやくこの男に言いたかったことを思いついた。
「こんにちは。初めまして。父さんのこと、聞きに来ました。僕が誰なのか知りたいから」
そしてザザに言いたい。
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