笑みの向こう

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「家探ししてほしいんだ」 「ごめん。ジェヌ。もう一回言って」  放課後、ザザは僕をまじまじ見た後、言った。 「家探ししてほしいんだ」 「あのね、ジェヌ。あたし、あなたの親友として言うわ。犯罪はよくないと思うの」 「犯罪? そんなわけないだろ。第一、許可は得てるよ」 「誰の?」 「母さんの」 「母さん!? あなた止めなかったの?」 「待って待って。ザザ」 僕は慌てた。どうも変だ。 「俺、もしかして誤解されてるんじゃないかな」 「そうだといいんだけど。あなた、家探ししてほしいって言ったのよ。他人の家に忍び込んで何かを探していいのは本の中の探偵だけよ」 「俺、主語言ってない。俺の家だよ。他人のじゃない。君には母さんの部屋を見てほしいんだ」 「それはそれで問題よ。母親の部屋を暴こうなんてよくないわ」 「待って待って」 僕は話す順番を間違えたらしい。僕の悪い癖だ。どうも段取りが悪い。僕は昨日のことを話した。父親のこと、母さんの返事。 「なるほどね」 ザザはうなずいた。 「いくら息子だからって女のひとの部屋をひっくり返すのはよくないと思うんだ」 母さんは五年前、僕に自分の部屋の掃除の仕方を教えてくれた。これからは自分で掃除するのよ。ここはあなたの場所なんだから。母さんは僕にプライベートを教えてくれた。だったら、母さんのプライベートも守るべきだ。僕たちは家に二人きりだ。だからこそ絶対にお互いが知らない場所を作らないといけない。 「わかった。でも、お母さんにちゃんとわたしが家探しするって言ってよ」 「ありがとう。いつ来れる?」 「次のお休みの一〇時は?」 「いいよ。待ってる」
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