笑みの向こう

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「ジェヌ! これ見て」  本当にザザは有能だ。母さんにザザの家探しをの許可をもらってやって来たザザはお昼にもならない頃に写真を見つけた。母さんと同じ年ぐらいの男性が一人ほほ笑んで写っている。写真の裏には住所が書いてあった。名前は書いていない。 「ここ行く。ちょっと遠いけど」 「でもこのひとがお父さんかどうかわからないわ」 確かに。僕に全く似ていない。ひょっとすると全く関係ない写真かもしれないのだ。 「お母さんに聞いてみたら」 「出かけちゃったよ。それに、多分、聞いても教えてくれないんじゃないかな」 「そうね。確かにそうだわ」 ザザはうなずいた。 「一人で行くんでしょ」 「うん。これは僕がひとりでやるべきだと思うんだ。助けてくれてありがとう」 「いいのよ。友達じゃない」 「父さんが見つかったら、俺とデートしてくれない?」 ザザは不意に真っ赤になった。 「いいわ」 「うん」 予想外の反応に僕も顔が熱い。てっきり冗談に受け取って「いいわよ」って軽く言うのかと思った。で、僕はそれを見て「恋人になってくださいって意味だよ」って格好良く言うはずだったんだけど。 「どこ行きたい?」 「どこ連れてってくれるの?」 「どこでも、君の行きたいところなら」 「それ、昨日貸してあげた本のセリフじゃない」 ザザはにやにや笑った。さっきの赤面は何だったのかと思うほどの温度差だ。 「ザザ」 「公園でランチしたい」 「オッケー」 デートの約束は取り付けたんだ。そこでちゃんと言おう。しかし、ザザはしっかりしてる。将来、尻に敷かれないようにしないと。
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